ミッドセンチュリーって何だろう?

2016.02.10 Wednesday

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    久しぶりにインテリアの話題です。

    我が家のインテリアはミッドセンチュリーの家具が中心にあります。



    ミッドセンチュリーと言えば、イームズ夫婦やジョージ・ネルソンなどがデザインしたものを思い浮かべると思います。

    しかし、ミッドセンチュリーの定義については以外と一般的に周知されていないのではないかという気もします。

    ですので、今回の記事はミッドセンチュリーデザインとは何かということについて書いてみたいと思います。


    ミッドセンチュリーの定義

    ミッドセンチュリーを直訳するなら「世紀の半ば」となります。この直訳はあながち間違いではなく、20世紀の半ばの1940〜1960年代ころのアメリカで生まれた工業デザインをミッドセンチュリーと呼びます。

    このミッドセンチュリーデザインが生まれた背景は、バウハウスまで遡る必要があります。

    バウハウスは、1919年、ドイツ・ヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行った学校。また、その流れを汲む合理主義的・機能主義的な芸術を指すこともある。
    引用:Wikipedia


    バウハウスのデザインは当時、世界中に広がり趨勢を誇っていました。ところがヒトラーの登場によって退廃的との指摘を受け、バウハウスそのものが閉鎖に追い込まれてしまいました。バウハウスの講師たちはナチスからの弾圧を逃れるため、ドイツを離れてアメリカへ渡りました。その代表格がミース・ファン・デルローエなどになります。



    そして、彼らバウハウスの講師などが新たにアメリカでバウハウスデザインの系譜を繋いで、モダンデザインをアメリカに根付かせます。教科書的にはそれがミッドセンチュリーの起源になったと言われています。

    第2次世界大戦以降、産業の中心はアメリカに移り、大量生産大量消費に支えられ様々な工業製品が生まれました。戦後アメリカの内需は拡大され、住宅の新築ラッシュとなり家具の需要も増えていきました。そのような背景のなか、新素材や新しいデザインの家具が生産され、後にミッドセンチュリーモダンと呼ばれるデザインの系譜が生まれました。

    ミッドセンチュリーを一言で定義するなら、20世紀半ばのアメリカを中心としたモダンデザインと言えるかと思います。


    ミッドセンチュリーデザイン

    ミッドセンチュリーのデザインは、当時新素材であったプラスチックのものが多いのも特徴です。またデザイン的に軽快で自由なものが多くあります。



    ミッドセンチュリーデザインを考える上で、その起源となったバウハウスデザインの家具を対比させると分かりやすいかもしれません。下の画像はバウハウスデザインを代表する椅子であるワシリーチェアです。



    デザインは、マルセル・ブロイヤーになります。

    もう一つバウハウスデザインの椅子を見てみたいと思います。前述したミース・ファン・デルローエのものです。



    カンティレバーチェアになります。

    バウハウスデザインの椅子も素晴らしいものであることは間違いありません。ワシリーチェアはスチールパイプと張り革というシンプルで直線的なデザインです。他方カンティレバーチェアは構造的にスチールの弾力を生かして座り心地の快適性を追求した椅子です。

    バウハウスデザインは近代合理主義的要素の影響があるのか分かりませんが、デザインと機能性を取り除いてしまうと何も残らないくらい無駄のないデザインです。ネガティヴな意見を言うとデザインに緊張感があって息苦しく感じることもあります。さらに言えば素朴さがないというのが率直な感想です。

    とバウハウスデザインの名作にネガティヴな意見を述べさせてもらいましたが、ようするにセレブな豪邸にあるような椅子に偏見があるだけなのかもしれません(笑)。


    ミッドセンチュリーの魅力

    ミッドセンチュリーデザインの家具はバウハウスが起源とは言え、ある意味その反動があったのかもしれません。ミッドセンチュリーデザインの家具は直線的なものより曲線を多用したものが多く見られます。



    ジョージ・ネルソンの曲線に対する執着はどことなくバウハウスデザインに対するアンチテーゼのような気がしますが、これについては全くの個人見解です。

    さて、私自身バウハウスデザインよりもミッドセンチュリーデザインに魅力を感じるのは事実です。なぜミッドセンチュリーデザインの方に惹かれるかと問われると説明が難しいですが、隙があるデザインのものが多いからなのではないかと思います。的確な言葉が思いつかず申し訳ないのですが、ミッドセンチュリーデザインの家具は先に挙げたジョージ・ネルソンのマシマロソファにしても、そこまでやるかと笑ってしまうようなデザインです。

    また景気が良かったころのアメリカで勃興したムーブメントであったため自由で未来志向の楽観主義的な明るさがあるのも事実です。



    ミッドセンチュリーのデザインはどこか愛嬌があってデザイン的な合理主義を無視したようなものが多くみられます。イームズのシェルチェアにしても、よくぞこのような思い切った椅子をデザインしたと思います。



    ある種このようなデザインは、時代を背景としなければ生まれなかったものかもしれません。とにかくミッドセンチュリーデザインの魅力は自由で明るいということに尽きると思います。


    北欧モダンとの関係性

    ミッドセンチュリーと北欧モダンの関係性は全くないとは断言できません。インテリアのカテゴリーで分類すればミッドセンチュリーと北欧モダンというのは別々のカテゴリーに分類されてしまいます。

    20世紀半ばに北欧で何が起きていたかと言うと、まずフィンランドではアアルトが成形合板や引き曲げの技術を開発して椅子を立体的にデザインすることを考えました。



    アアルトの代表作であるスツール60は19
    33年に発表された椅子です。

    成形合板はミッドセンチュリーでもポピュラーな素材であり、成形合板の技術開発によって複雑な三次曲線の椅子が安価に製造できるようになりました。

    1944年にイームズとサーリネンの共作によるオーガニックチェアはその代表と言える椅子と思います。



    一方デンマークでは指物師のマイスター制度というものがあり、国として家具職人を育成する環境が整っていました。ですので、デンマークでは良質な家具が生まれる土壌があったと言えます。

    同国では、ハンス・ウェグナーやフィン・ユール、アルネ・ヤコブセンなど数々の優れた家具デザイナーを輩出しています。これらのデザイナー達が次々とモダンなデザインの建築物や家具を生み出し、それらが北欧モダンと呼ばれるようになります。

    当然、これら北欧モダンのデザインはアメリカでも認知され、1954年には「デザイン・スカンジナビア展」がアメリカ各地で開催されており、北欧モダンが世界中に広がる契機となっています。ミッドセンチュリーと北欧モダンの流れというのは別々の潮流という訳ではなく、お互いに相関関係にあったことは紛れもない事実でした。



    まとめ

    あれこれミッドセンチュリーデザインに関して小難しいことを書かせていただきました。しかし、理屈抜きでミッドセンチュリーデザインを気に入れば、椅子なり時計なり好きなものを購入すればいいと思います。

    デザインの背景などは、気に入ってから考えればいいのであって、特段好きでもないものに対してあれこれ考えるのは時間の無駄であろうかと思います。

    よく聞く質問で、ミッドセンチュリーデザインと北欧デザインのものを一緒にして大丈夫かということを聞きます。個人的には全く問題ありませんし、時代的な背景もご説明したとおりお互いに相関関係があるので違和感はないと思います。

    後は何を選ぶかという問題になります。もちろんミッドセンチュリーデザインと北欧デザインが相関関係があると言っても選び方によっては違和感がある場合もあります。最終的にセンスの問題になってしまいます。

    こればかりは、インテリアを選ぶ際に最も難しい問題で、気に入ったものばかりを並べてしまうと失敗することもあります。独善的にならずに他人の意見を聞くというのが大事だと思うのですが、なかなか難しいです。




    最後のくだりは自分自身に対する戒めでもあります。




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